2012年12月2日日曜日

ヤン・ウェイチー


もしも明日で世界が終わるとしたら

朝の日差しで起きた時は、鳥たちはいつも通り無邪気鳴いている。私は右手を額に当て、暫しそのままベッドの上に横たわっていた。目を閉じ、耳を澄ませば、鳥の綺麗な声が風の鼓動と一緒に伝わってくる。だが車の音はやはり聞こえない、まるでそのような機械がこの世界に最初から存在していないようだ。錆び付いたブランコの鎖だけが風に揺らす、庭から鋭い鳴き声を出し、聴覚を刺激している。いつもなら、もう遅刻しそうな学生が部屋から慌てて飛び出し、車を始動する音が目覚ましより騒がしくなる時間なのに。しかし、今日は学校が休みだ。いや、正確には「今日も」だ。このようになったのはもう三日目だから。それも学校だけではなく、会社、工場、銀行まで閉まることになった。無理もない、明日でこの世界が終焉を迎えるから。
バタフライ効果による天気の変化ですら予測できる世界一のスーパーコンピューターが「銀河の中心に散らされている暗黒物質の異変により、避けられぬ大きな災いがこの世に訪れ、世界は丸ごと潰される」と予言をしたのは半年前らしいが、NASAがそれを公式発表したのは三日前だった。この半年の間に、NASAは裏で世界中の有望な科学者を集め、色々な対策を考えてみたようだが、ハリウッドの映画のように上手くいくはずもない。銀河規模の災難には、人間の力はやはり小さすぎるのだ。世界終焉の噂は四ヶ月前から民間に流しているが、三日前まではそれを信じている人はほんの一部だった。だから、それがNASAの公式発表に出た日に、世界が混乱に陥れた。その中で民衆の不安を鎮めようとしているのは、死んだ後の世界があると信じている人々が創立した「死後世界集団」(通称「SSS」)。そのリーダーは、大災難の情報がまだ噂である段階からそれを信じていたイギリス国教会の神父だ。彼はその混乱の中で自分のカリスマ性を世に示した――世界各地の宗教リーダーを仲間にし、世界人口の半分以上を集団に招き、精神的な平静を与えた。そして不思議なことに、二日目となった頃に中国以外の国から混乱はもう殆ど消えた。中国人は大方神などの存在を信じない主義だから、仕方もない。
混乱は殆ど消えたとは言え、世界は四日前の日常に戻ったわけでもない。確かに人々は不安の気持ちを捨てた、但しそれは前向きになったことではなく、絶望だ。不安になることですら諦めたという意味だ。私のように部屋に閉じこもっている人も恐らく少数ではないだろう。食べ物などの商品はもう無料で手に入れる。後数日で死ぬなら、金より善を積んた方がいいと、スーパーの経営者が言った。だがどうせ死ぬなら、食べる必要もなくなってしまたではないかと私が思った。私には不安も絶望もない。誰もいつかが死ぬ。とは言え、それがこれほど早く訪れるとは流石に予想もしなかった。悔しい、夢があったから。誰にも負けない自信がある、素晴らしい夢があった。二十歳になり、大学を卒業したら大学院に入り、それから夢を叶える予定が狂ってしまた。明日があるから今を大事にしていたとしたら、明日のない今日はなんの為に存在しているのだ?肉体よりも、精神の方が先に潰れてしまいそう。
隣の住人が慌てて部屋から飛び出した音が聞こえた、そして携帯に設定している目覚ましの電子音が耳元で鳴き始めた。9時まで回った分針を目にした瞬間、私は自分の不覚を反省しながら布団から飛び出した。何か変な夢を見た気がしたが、今はそれを思い出す閑がない、月曜日はいつも忙しいから。

3 件のコメント:

  1. 後記:

     ヤンです。愚作をご覧いただいた皆様、大変有難う御座います。まだご覧になっていません方々、どうぞ、宜しくお願いします。
     今回の作文ですが、「もしも…たら」を題で書くことになっていまので、久々に小説を書きました。自由度があまりにも高い故、最初は何を書けば良いのか、正直迷ってしまいました。色々考えてみたんですが、せっかくなので、何か暗い話題にしようかなと、そして派手にやりましょうと考えた。で、最後に夢オチにすれば問題ないでしょう…多分(笑)。そんなかんだで、銀河団を滅ぼすことにしました。勝手に皆さんの住む世界を(妄想の中に)終わらせてすみませんでした。
     世界規模の話なんですので、書きたいことは沢山あって、どっちを捨てでも惜しい感じ。逆の意味で、何を書けば良いのか分からなくなってしまった。実際に、初稿から修正して、最終稿となった頃には既に1400字の上限を超えてしまいました、減点にならないといいですけど(笑)。もしも機会があれば、またあの壊滅寸前の世界に起きている物語を書きたいと思います。
     では、縁があればまたお会いしましょう。

    ヤン・ウェイチー
    2012年12月2日

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  2. ガン カンイン2012年12月2日 15:54

    ヤンさん、日本語が本当に上手ですね。
    あなたの作文を読んでビックリしました。文法、漢字を適材適所に使用している所等々、完璧な仕上がりです。最初は暗い作文かと思っていましたが見事な夢だったというオチ、感服です。
    しかし死について、終焉を迎える世界に関してはとてもよくかけていると思います。私も死を目の当たりにしたことがあるので、死がいかに怖いかよく理解しているつもりです。
    この世には絶対はありません、明日、いや何時世界が滅んでもおかしくはないのです、ですから毎日を、この一秒を大事にしていきましょう。
    縁があればまたどこかで。

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  3. ダークフレームマスター2012年12月2日 16:42

    ふん、それはただの夢ではない。
    マーヤの予言によっては確かに今年のことだ。
    まあ、闇の炎にせいぜい足掻けばいい、人間ともよ。

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